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お話と音楽

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ふたたび平和な国へ の巻

収容された、すべてのウサギたちを、安全な場所に移動させ終えると、兵隊たちは、有刺鉄線を取り外したり、牢獄の柵を撤去したりして、今まで隔離されていた施設を、開放しました。
そして、グレたちと兵隊は、山を下り、王様のいるお城に向かったのです。収容所の兵隊たちは全員知恵の薬を飲んで、改心していましたが、街のウサギたちは、まだ元のままでしたので、作業が無事終るまでは、充分慎重にことを運ばなくてはなりません。
全員が、トウメイの姿で、街中では、仲間同士の会話を聞かれないように、夜の間に行動は進められました。グレたちはもともと夜行性ですので、どんな暗闇でもよく見えるのですが、ウサギたちも、暗闇はお手の物でした。
全員がもうスピードで、夜の街を駆け抜け、お城にたどり着きました。

お城では、この前と同様、舞踏会が開かれていました。
マスター「これはもしかしたらチャンスだぞ!!」
カノジョ「一度にたくさんのウサギに、知恵の薬を飲ませることができるわ。」
グレたちは、キャッツアイでも経験してきましたので、席を立って、踊りに行っているウサギのグラスに、次々と知恵の薬を垂らしていきました。
兵隊のウサギたちは、はじめての作業でしたので、ガタガタ震えて、グラスを倒したり、椅子につまずいて、転んでしまうウサギもいました。
大広間のウサギたちは、誰もいない席で、グラスがガチャンと割れたり、椅子が、ガタガタいったりしましたので、一瞬なんだろうと、振り向くウサギもいましたが、その後何も起こらないので、気にも留めない様子で、又踊りや談笑に興じていました。

マスターとカノジョが王様のテーブルに向かいました。
マスターが一番度胸があるということになって、王様のグラスに知恵の薬を入れる役をすることになったのです。
カノジョが隣にいるおきさき様の係りです。
王様は終始グラスを手に持ったままで、なかなかテーブルに置こうとしません。
カノジョがおきさき様の方を向いて、念じました。
「おきさき様、どうか王様と踊ってきてください!!」
すると、なんとおきさき様が、そのとおりの行動に出たのです。
おきさき様「王様、今宵はとても楽しうございます。私も踊りたくなりました。
どうぞ、お相手をしてください。」
王様「ほう!!そなたが踊りたくなったとは、めずらしい。喜んでお相手いたしましょう。」
王様はおどけたしぐさで、おきさき様を連れ立って、踊りの輪の中に向かいました。それに続いて、お付の家来たちも、王様の後に従いました。
マスター「今だぞ、急げ!!」マスターとカノジョは無事王様とおきさき様のグラスに知恵の薬を入れることができたのです。
グレ、チャピー、エミーも、家来のグラスに入れることができました。
こうしてその日の舞踏会が終るころには、ほぼ全員のグラスに薬を入れることができました。
マスター「ようし、やり終えたぞ。」
グレ「今日のところはこれで引き上げよう。」

次の日、バルバランの国は大騒ぎになりました。王様が国中に号外を配ったのです。
『国民の皆さん、私が今まで犯した、数々の罪をお許しください。耳の短いウサギというだけで、差別、隔離して、国民の皆さんを苦しめてきました。昨日の夜、神様のお告げがあったのです。私は自分の犯した罪の深さをはじめて悟りました。もうこのような過ちは繰り返しません。たった今からバルバラン王国のすべてのウサギは自由の身になります。
バルバラン王』

家族を強制収容所に連行されていたウサギたちの喜びは、大変なものでした。町中がお祭り騒ぎになりました。耳の長いウサギも短いウサギも手を取り合って、喜びを分かち合っています。グレたちも、もうトウメイの姿でいなくてもよくなりました。
収容所のウサギたちも、兵士に連れられて、街に戻ってきました。街では、もう凱旋帰国の兵士を迎えるような歓迎でした。

王様はグレたちをお城に呼びました。
グレたちは、今度は姿を現して、王様の前に出ました。
王様「あなた方は、この国の恩人です。あなた方が私の過ちを気づかせてくれました。もし、よかったら、私に代わって、バルバラン王国を治めていただけませんか。私はおきさきと共に、この国を出て、反省の旅に出ようと思います。」
グレ「王様、せっかくですが、私たちは放浪の旅をするネコなのです。今までもいろんな国を回ってきました。これからも旅を続けていくつもりです。王様は改心されたのだから、ここに留まって、これからはバルバラン王国の国民が平和な暮らしができるように働いてください。それが王様の義務であると思います。」
王様「義務ですか!!そうですね、今までの分も罪ほろぼしして、平和のために、貢献していきましょう。色々ありがとう。これからも時々困ったときは、相談にのってください。」

5匹は王様、おきさき様、兵士や収容所にいたウサギたち、街のウサギたちに見送られて、バルバラン王国を後にしました。
カノジョ「天国のメイとクロスケに報告しなくちゃ。」
グレ「天国の子ウサギたちも喜んでくれるだろう」

つづく

BGM ポロネーズ(遺作、ショパンが7才の時の作品)

イラストの説明
{左下にバルバラン王国のウサギがいます。宇宙は広いなあ}
宇宙は広いなあ

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