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お話と音楽

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強制収容所のウサギたち の巻

 いよいよ5匹は強制収容所に行く準備を始めました。
マスター「今回は大量の知恵の薬とトウメイ薬が必要になるぞ。」
カノジョ「コロボックルさんたちに頼んで、作ってもらいましょう。」
カノジョとチャピーはまほうのじゅうたんに乗って、コロボックルの住む森に向けて、出発しました。
残りの3匹はその間、バルバランの国を視察してまわりました。街中だけでなく、のどかな田園風景の広がる田舎でも、装備した兵隊の姿が目につきました。
グレたちは毎日のように兵隊に捕らえられ、連行されていく、耳の短いウサギの姿を目撃したのです。

1週間後カノジョとチャピーが、大量の知恵の薬とトウメイ薬をかかえて、戻ってきました。
カノジョ「コロボックルさんたちは、みんな総出で、徹夜をして、薬を間に合わせてくれたのです。」
チャピー「無駄にならないように、大切に使いましょう。」

5匹はトウメイの姿でまほうのじゅうたんに乗って、強制収容所の近くまでやってきました。
強制収容所はバルバランの街から遠く離れた山の奥深くにあって、もし仮に脱走できたとしても、脱走したウサギが我が家に戻れる距離ではありませんでした。5匹は深い森の中にまほうのじゅうたんを隠すと、強制収容所の門の前までやってきました。

強制収容所は、有刺鉄線の張り巡らされた高い塀に囲まれており、塀のまわりには、警備の兵隊が並び、四六時中、目を光らせていました。そして脱走者を見つけると、訓練されたシェパード犬を使って、追いかけるのです。ほとんどのウサギは捕まり、イヌの餌食にされました。
マスター「キャッツアイ以上の警備だな。」
カノジョ「ここに入れられたら逃げ出すのは不可能だわ。」

5匹はキャッツアイのときと同じく、夜になるのを待って、塀の中に入りました。
収容所の中では収容されたウサギたちは、朝から晩まで、強制労働をさせられ、弱ってきたウサギは次々に殺されていきました。

そんな過酷な日々の中でも、恋をするウサギたちもいて、愛の結晶の赤ちゃんをみごもった雌のウサギもいるのです。しかしここでは、赤ちゃんを無事出産することはできませんでした。おなかに赤ちゃんがやどって、出産の日が近づいてくると、おなかが大きいことが発覚してしまいます。
そうすると、その雌のウサギは、手術室に連れて行かれて、赤ちゃんを流産させられてしまうのです。出産日近くになると、流産するのも命がけで、出血多量で、死ぬ場合もあります。
もし、出産まで発覚せずに、無事出産できたウサギも、生まれて間もない子ウサギを、目の前で、殺されました。
母親が生まれたばかりのわが子を殺される現場を見る状況を想像できますか?こういう犯罪は決して許されるものではないのです。

カノジョ「天国の子ウサギが話していたのは、このことだったのね。」
チャピー「天国の子ウサギのお母さんは、まだ生きているのかしら。」
エミー「会って、子ウサギたちのことを伝えなくては。」
マスター「この国のやり方、狂っているぜ。」
グレ「又、例の薬を使って、1匹残らず、更生させよう。」

トウメイな姿になり、収容所の施設に入り込んだ5匹は、キャッツアイのときのように、まず見回りの看守から、「知恵の薬」を飲ませていったのです。
一方、カノジョ、チャピー、エミーの3匹は、おなかの大きそうな雌のウサギを見つけると、グレたちの計画を説明して、トウメイな姿になってもらい、次々と収容所から脱走させました。そして、しばらくはトウメイの姿のままで、バルバラン大国の国外の、安全なところに避難させました。
カノジョたちは天国にいた子ウサギたちのお母さんたちにも会うことができました。お母さんたちに天国の子ウサギの話しを伝えると、みんな涙を流しながらも、ほっとした様子でした。しかし子ウサギを殺されて、悲しみのあまり、病気になって、死んでしまったお母さんもいると聞かされました。
エミー「まあ、間に合わなかったのね。お亡くなりになったお母さんも、もう天国に行っているでしょう。」
カノジョ「メイたちに連絡して、子ウサギと会えるようにしてあげましょう。」
チャピー「みなさん、私たちは必ず平和なバルバランの国を取り戻します。もう少しの辛抱ですから、がんばってください。」
1週間も経つと、収容所の看守たちのほとんどが自分の行ってきた罪に気づき、まだ「知恵の薬」を飲んでいない仲間の行動を非難するようになってきたのです。そしてグレたちに協力して、「知恵の薬」を仲間に飲ませることを手伝ってくれるようになりました。

こうして収容所の兵隊たちは、全員「知恵の薬」を飲んで、今までの罪を悔い改めたのです。
収容所に収容されていた耳の短いウサギたちは、全員解放され、しばらくはトウメイな姿で、国外の安全な場所に保護されました。
グレたちはいよいよこれから、宮殿に乗り込んで、王様に「知恵の薬」を飲ませるのです。
でも今度は5匹だけではありません。「知恵の薬」を飲んだ、収容所の兵隊たちが協力してくれることになりました。
心強い味方を得て、いよいよ宮殿に向けて出発です。

つづく

BGM 泣かせたまえ「リナルドより」 HANDEL

{イラストの説明}
強制収容所から解放され、亡きわが子に花を手向ける母ウサギ
亡きわが子に花を手向ける母ウサギ

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