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お話と音楽

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バルバラン王国 の巻

翌日グレたちは、まほうのじゅうたんに乗って、バルバラン王国の入り口近くに到着しました。バルバラン王国の周りには、高い塀がはりめぐされ、門には銃を持った兵隊が立っていました。
グレたちは、チャールズの祖国、キュッツアイと同じようだと思いました。
バルバラン王国では、耳の長い、真っ白なウサギだけが入ることができ、他のウサギや他の生き物は国の中へ入れてもらえないのです。

グレ「中へ入るには、トウメイ薬を使うしかないようだな。」
マスター「やっとキュッツ・アイの仕事が終ったところなのに、又トウメイになるのかよ!」
カノジョ「仕方ないでしょ。とにかく夜まで待ちましょう。トウメイになったとしても、夜のほうが、行動しやすいわ。」

5匹(グレ、マスター、カノジョ、チャピー、それからマスターの恋ネコのエミー)は夜が更けるのを待って、なるべく兵隊たちから遠い場所の塀をよじ登りました。

カノジョ「まずお城に行ってみましょう。どんな王様か見てみないと。」
5匹は王様の宮殿に向かいました。
お城の入り口には耳の長いウサギの兵隊が立っていましたが、トウメイ薬のおかげで、どこでもスイスイ入って行けました。

お城の庭には色とりどりの花が咲き乱れ、緑の芝生の中央には、ウサギの妖精が壺を持っている彫刻の噴水がありました。(ネコは暗闇でも、よく見えるのです)
庭のあちこちにはギリシャ神話に出てくるような大理石の彫刻が点在しています。月の光に照らされて、それらの彫刻が浮かび上がって、昼間とは違った幻想的な美しさです。5匹はしばしその庭の雰囲気に酔いしれました。

エミー「さあ、中へ入りましょう。」
エミーの言葉に、みんな我に帰り、自分たちが何をしに来たのか、思い出しました。

宮殿の中に入ると、もう夜も更けているのに、にぎやかな話し声や、音楽が聞こえてきました。お城では舞踏会が開かれていたのです。
大広間の中に入ると、美しく着飾った紳士、淑女が優雅なワルツを踊っているところでした。
舞踏会に招待された、貴族のウサギたちです。

チャピー「みんな長い耳で、真っ白ね。」
グレ「本当だ、茶色や黒いウサギはいないし、耳の短いウサギも1匹もいないね。」

大広間の中央は、一段高くなっていて、王様、お妃様、それにお付の家来が控えていました。
王様も、長身のスラリとした美しいウサギでしたが、隣に座っているお妃様の美しさはこの世のものとは思えないほどでした。

チャピー「こんなきれいなウサギたち、見たことがないわ!!」
グレ「こいつらは、白い毛並みと長い耳を持つ血統を守るために、他のウサギを抹殺しようとしているんだ。」
マスター「自分たちがこの世で最高のウサギだと思っているんだ。あいつらは他のウサギやおれたちのようなウサギ以外の生き物の存在を認めないんだぜ。」
カノジョ「この地球はウサギたちだけの世界ではないし、ましてその中でも一部のウサギだけが生きる権利があるという考えは、許してはおけないわ。」

エミー「明日は町のウサギたちの暮らしを見に行きましょう。みんなが幸せに暮らしているようには思えないわ。」

グレたちはそっとお城をあとにしました。

次の日、グレたちは町のウサギの家や田舎のウサギの家を覗いてみました。
ウサギたちはお城の貴族とは対照的に、皆暗い顔をしていました。
この国では耳の長さも法律で決められていて、わずか数センチでも満たないウサギは、捕らえられて、収容所に送られるのです。
耳の短いウサギを見つけて報告した者には、多額の報奨金が与えられましたので、皆となり近所に、耳の短いウサギはいないか、目を光らせていたのです。

グレたちの目の前でも、一匹の子ウサギが耳の長さが足りないと通報され、兵隊に連れていかれるところでした。
母ウサギは懸命に頼みましたが、聞き入れてもらえませんでした。
母ウサギ「お願いします。うちの子はそんなに短いとは思えません。これから成長して、身長も伸びれば、耳も伸びると思います。」
兵隊「いや、認めるわけにはいかないね。これは法律だから。
現在の耳の長さが足りなかったら、だめなんだ。」

懇願する母ウサギを振り切り、兵隊は子ウサギを連行していきました。

カノジョ「もう、なんとかできないかしら、私、がまんできません。」

グレたちはトウメイな姿ではあっても、今出ていって、子ウサギを連れてくるわけにはいきません。
グレたちの胸の中は、怒りとはがゆさでいっぱいになりました。

そして収容所に入れられたウサギたちをなんとしても助け出そうと心に誓うのでした。

つづく

BGM ヴェニスのゴンドラの歌(メンデルスゾーン)

{イラストの説明}
兵隊に連行される子ウサギとおびえるウサギたち
兵隊に連行される子ウサギとおびえるウサギたち

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