縲€
music_noteそれぞれのお話に合わせてBGMを用意しています。よろしければダウンロードして、お話と音楽をお楽しみください

お話と音楽

このページは、1月に1回(毎月末)更新されています。はじめての方は、くろすけの巻きからごらんください。

<<前のお話 もくじ 次のお話>>

人間の仲間も の巻き

 お月様のくださった星のしずくのプレゼントで、思いがけないステキなクリスマス・イヴを過ごすことができたグレたちは、あくる朝又手分けして活動をはじめました。

チャールズとメアリーが、メアリーの家族のもとへ戻ってみると、家族は誰もいません。どうしたのか不信に思い、メアリーは隣の家のネコとテレパシーで通信してみました。
メアリー「私の家の家族はどこへ行ったのか知らない?」
隣のネコ「君の家の人たちは、昨日ケイサツが来て連れていったよ。何だかよくわからないけど、ネコとしゃべっていたとか、クサリにつながれたネコを自由にしろとか、わけのわからないことを近所に言って歩いていたので、気が狂ったと思われたらしい。それで、他の人に危害を加えると大変だからという理由で、捕らえられてしまったらしいよ。」
メアリー「家族たちは他の人たちも当然ネコと会話できると思っているのよ。どうすれば家族たちを連れ戻せるかしら?」

チャールズ「トウメイになって、刑務所に乗り込もう。警察に捕らえられているネコもたくさんいるから、彼らとテレパシーで通信しあって、君の家族も助け出そう。それには刑務所の看守たちに、知恵の薬を飲ませるのが一番手っ取り早いな。」

2匹は又トウメイの姿で刑務所の塀を乗り越えました。高くそびえる塀には、鉄条網が張り巡らされていましたが、ネコにとってはたいした高さではありません。2匹はらくらくと塀を乗り越え、仲間のネコたちが捕らえられている建物に近づきました。

ネコたちはみな、たいした罪でもないのに、捕まって入れられていたのです。たいがいは飼われている家から逃げ出したネコでした。飼われているといっても、家の外には1歩も出してもらえず、中には家の中でもクサリにつながれて、自由を奪われているネコもいましたので、みな、ちょっとでもすきがあれば、脱走したいと思っていたのです。
仲間のネコたちの中に、メアリーの家族がいるのも確認できました。
メアリーは家族の女の子とテレパシーで通信しました。
「リリー(メアリーの家族がつけた呼び名)です。助けにきましたから、安心してください。でも私たちがきていることは誰にもしゃべってはだめです。少し時間がかかりますが、必ず全員助け出しますので、もうしばらくがまんしてください。」
チャールズも仲間のネコたちと、助け出す方法を話し合っています。もちろん、テレパシーで通信しているので、まわりの人には聞こえないのです。

いよいよ助け出す方法が決まり、さっそく行動開始です。
チャールズたちは、あたりが夜の闇に包まれるのを待ちました。やがて1人の看守が最後の見廻りにやってきました。それぞれの部屋の窓から、獄中のネコたちをのぞいて、全員いるか、確認しています。看守は最後の部屋を見終わると、あたりに誰もいないか、確かめてから、おもむろに、上着のポケットからウイスキーの瓶を取り出しました。
チャールズは知恵の薬のびんを持って、その看守のすぐそばによっています。そして看守がウイスキーの瓶のふたを開け、瓶を口に近づけようとした瞬間、知恵の薬をウイスキーのびんに注ぎ込みました。いつもの10倍くらいの量をそそぎました。看守はアルコールのせいか、知恵の薬のせいか、一口飲むと、うとうと眠り始めたのです。

チャールズは看守の腰に巻かれている鍵のついたベルトから、すべての鍵をはずして、1つずつの部屋に差し込んでいきました。やがて全部の部屋の鍵が開いて、全員脱出できる状態になりましたが、看守が起きてくるまで、脱走しないことにしました。

なぜだかもうすぐわかりますよ。

それから3時間ほどして夜もすかっり更けたころ、チャールズは看守に声をかけました。
「看守さん、聞こえますか。僕の話を聞いてください。」
看守は眠そうな目をこすりながら、チャールズのほうを見て答えました。
「やあ、ネコさん、なんの話でしょうか、お聞きしましょう。」
どうやら知恵の薬は効いているようです。チャールズは捕らえられた仲間のこと、人間たちがチャールズの祖国を侵略したこと。そしてチャールズたちが助けにきたこと。今までのことを全部話しました。
すると看守はじーっと最後まで話を聞いていましたが、涙しながら答えたのです。
「ネコさん、あなたたちの国を侵略していたとは、私はなんて愚かだったのでしょう。つらい思いをさせて申し訳ありませんでした。私にできることがあれば、どんなことでもいたします。なんでも言ってください。」

こうして看守はチャールズたちの仲間になったのです。その看守の担当の部屋の鍵は全部開いていましたが、脱走するのはもう少し待つことになりました。その前にやらなくてはならないことがあったのです。

そうです。いくら知恵の薬を飲んだ人間が、まともになっても、少数でいるうちは、今度のメアリーの家族のように、捕らえられてしまう危険性があります。
チャールズたちは、その看守を見方にしたことで、その刑務所の人間全部に知恵の薬を飲ませることにしたのです。

チャールズが看守にしたようなやり方で、トウメイになった仲間と看守の協力のもと、1週間かけて、とうとう全員に知恵の薬を飲ませることができたのです。

1週間後、その刑務所に捕らえられていたネコたち全員が釈放されました。ネコたちは、刑務所の人間たちと固い握手をかわしてわかれました。メアリーの家族たちも、自分たちと同じ人間が増えたことで、だいぶ心強い心持になりました。
このような地道な活動を、仲間たちは、それぞれの場所で行っているのです。
この点が結びついて腺になる日も、もうそこまできています。
チャールズたちは久しぶりに、トウメイではない、本来の姿で仲間とニャーニャー語り合ったのです。

つづく

BGM セレナーデ (F.シューベルト)

刑務所の塀

<<前のお話 もくじ 次のお話>>