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お話と音楽

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「知恵の薬」のききめの巻き

 日がとっぷりと暮れ、空の星が瞬きはじめたころ、まほうのじゅうたんは、キャッツアイの森の入り口に、降り立ちました。あたり一面、木々でおおわれており、近くには人家もないところなので、人に見つかる心配はなさそうです。グレたちを降ろすと、じゅうたんは再び第2陣を連れに、戻っていきました。グレたちは1匹づつ、ばらばらになって行動することにしました。そのほうが、会話することもできないので、見つかる確立が低いのです。

 チャールズはさっそく恋ネコのメアリーのいる家に向かいました。夜中歩き続け、ようやく朝日が昇る前に、たどり着くことができました。
「メアリー、チャールズだよ!」チャールズはメアリーに呼びかけました。
注 ネコは遠くはなれた相手と会話するとき、声を出さないでテレパシーで、心の中のことを相手に伝えることができるのです。チャールズとメアリーはテレパシーを使って会話しました。

「チャールズ、よく来てくれたわね、うれしいわ。でもどこにいるの?姿が見えないのだけど。」
メアリーは声のするほうを一生懸命目で追いましたが、姿が見えませんでした。
チャールズはそこで一部始終を話しました。
『漂流しているところを助けてもらったこと、たくさんの仲間がメアリーたちを助けに来たこと、知恵の薬やトウメイ薬のこと、等等。』

メアリーはチャールズの話を聞いて、やっと理解でき、ほっとしたようです。
「それなら、もうすぐ夜が明けると、女の子が新聞を取るために、外にでてきます。女の子がドアを開けたすきに、家の中へ入ってください。くれぐれも注意してね。」

朝日が昇り始めた頃、女の子が外へ出てきました。チャールズは玄関の横で女の子が新聞を取って戻ってくるのをまちました。そして女の子が再びドアを開けたすきに、なんなく家の中に入ることができたのです。

メアリーとチャールズは手の届く距離まで近づくことができましたが、気配を知られないように、神経を集中させて、テレパシーで会話をしました。
やがて奥さんが朝食の用意を始めました。
メアリーがチャールズに説明します。
「この家では、毎朝全員がカフェオレを飲むのです。家族が食卓に着くと、奥さんが銘々のカップに温かいカフェオレを注いでいきます。カップにそそがれたカフェオレの中に知恵の薬を入れてください。そのとき、いくらトウメイでも人間に体が触れたら、おおさわぎになりますから、気をつけて行動してください。」

やがてこの家のご主人、さっきの女の子、その弟が食卓に着くと、奥さんが温かいカフェオレを注ぎはじめました。奥さんはご主人のカップから順に注いでいきます。チャールズはまず、ご主人の横にしのびよると、すばやくカップに知恵の薬を垂らしました。次に奥さんは女の子、弟とカフェオレを注いでいきましたが、メアリーはチャールズが作業しやすいように、人間たちの注意をそらしてくれました。ニャーニャー鳴いて、ぐるぐるまわったりしています。
「リリー(この家でのメアリーの呼び名)、今朝はやけに鳴くなあ!どうしたのかい?」ご主人が言いました。
「きっとおなかがすいたのよ、今リリーにもカフェオレをあげますからね。」と奥さんがほほえみました。
この家で、メアリーは可愛がられているようだなと、チャールズは少し安心しました。お陰でチャールズは無事仕事を終えることができました。

家族全員がカフェオレを飲み終わるころには、家族たちは、今までもずーっとそうしてきたような自然さで、エミーと会話していました。そうです。この知恵の薬を飲むと、今まで他の生き物の言葉がわからなかったことを忘れてしまうのです。
メアリーはもう飼われているペットではありませんでした。
「お父さん、お母さん、私は今日は友達と約束があるので、今から出かけてきます。たぶん帰りは明日の夕方になると思います。」
メアリーはそういうとチャールズといっしょに部屋を出ていきました。女の子がドアをあけてくれ、「車に気をつけて行ってらっしゃい。」と言ったのです。
今まで部屋から1歩も外に出してもらえなかったのに、人間たちがこんなに変わるなんて、メアリーの驚きと喜びは計り知れないものでした。

家を出るとすぐに、メアリーはトウメイ薬を飲みました。これで安心して街を歩くことができます。ネコがフリーで街中を歩いているところを見つかったら、たちまち捕らえられてしまいますからね。
2匹は久しぶりの開放感にひたりながら、仲間たちのところへ向かいました。
仲間たちとは今夜、じゅうたんが降り立った森の入り口で折り合うことになっていたのです。他の仲間たちは、無事戻ってこれるだろうか、仕事は成功しただろうか、期待と不安の気持ちをかかえながら、2匹は歩いていきました。

ご安心ください。仲間たちはみんな集まっていましたよ。
今日はクリスマス・イブ!!
いつもならクロスケの家に集まってクリスマスパーティーをしているころですが、今年はトウメイの姿で、クリスマスどころではありません。
それでも空のお月様は、グレたちに星のしずくをプレゼントしてくれました。
きらきら光る無数の星がグレたちを照らします。

つづく

BGM トッカータとフーガニ短調 (J.S.バッハ)

星のしずく

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