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お話と音楽

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不戦ということの巻き

 エミーの家の近くの森には、今日はたくさんの動物たちが集まっています。
前回チャールズの祖国を救う為に、グレたちがたくさんの仲間に呼びかけたのを覚えていますか?
まほうのじゅうたんで手紙を配って回ったのです。

今日は連絡を受けた仲間たちが、この森に集まりました。フクロウさんや、バーバラさん親子、メルリンケルにリスラーズ、コロボックルに、それからギャラネコに向かう船の船長だった、ドラネコ船長、その船でいっしょだったネズミ委員長、ネズミ委員長たちは、今ではギャラネコで成功して、5つ星レストランを経営するようになっているのです。
この森の住人たちや、エミーが出会った、あのヤマセミの姿も見えます。
どうやらグレが代表して話をしているようです。
「そういう訳でチャールズは、国は失っても仲間たちだけは助け出したいと思っているのです。」

フクロウの中の1人が言いました。
「ここに集まった仲間たちも、戦うことになれば、皆もっと仲間を集めることはできるのです。団結して戦おうではありませんか。そんな卑劣な人間たちを
許しておく訳にはいきません。」
「オー!!」という歓声と拍手が湧き起こりました。

全員がこの意見に賛成と思われましたが、コロボックルの代表が口を開きました。
「皆さん、戦うことは誰にでもできます。しかしその結果人間の犠牲者も私たちの仲間の犠牲者も、たくさんの犠牲者が出るのです。もし私たちが戦ってチャールズの祖国を取り戻したとしても、犠牲者を出した人間たちの間には憎しみが残ります。戦争とはそういう憎しみの積み重ねの結果、太古の昔から繰り返されてきたのです。その恨みを背負った子孫たちが又、同じ争いを起こすことは目に見えています。私は不戦による勝利を勝ち取りたいと考えているのです。」
「不戦による勝利?」

みんなはあっけにとられました。
今度は別のコロボックルが話し始めました。
「戦わずしてチャールズの祖国を取り戻すには、この『知恵の薬』を人間たちに飲ませればいいのです。この薬はいわゆるまほうの薬で、これを飲んだら、今までわからなかった言葉がわかるようになるのです。
私たちは他の種類の動物や植物たちとも、あたりまえのように会話していますが、人間たちはその能力を授かっていないのです。
だから人間は私たちが何を考えているか、理解できないのです。この薬を飲んだ人間は、私たちと会話できるようになります。それでやっと対等に交渉できるようになるわけです。」

そいういとコロボックルはブルーのきれいなビンに入った薬を見せました。

みんなはしげしげとそのビンを眺めました。コロボックルの話を聞いて人間は人間以外の生き物の言葉を理解できないということを、初めて知ったのです。今まで人間は他の生き物よりもすぐれていて、とてもたちうちできる相手ではないと思っていたのです。

エミーが言いました。
「人間たちは私たちの言葉がわからないから、ひどい仕打ちをしてきたのかもしれない。その薬を飲めば、話し合いができるようになるのですね。不戦ということも不可能ではないと思います。私はコロボックルさんたちの意見に賛成します。」

薬を飲ませて、他の生き物の言葉がわかったところで、所詮悪い人間は聞く耳を持たない、今までどおり、勝手放題を続けるだろうという意見と、とにかく薬を飲ませて、様子を見よう。我々が考えていることが伝われば、きっと解決策が見つかるはずだ。という意見にわかれ、夜通し討論が続きました。その結果森の仲間たちは、不戦の道を選んだのです。

今後の課題はその薬をどうやって、人間に飲ませるかという点にしぼられました。なかなかの難問ですが、この仲間たちなら、きっといい案を考え出すことでしょう。
次回はいよいよチャールズの祖国に乗り込んで行って、無事薬を飲ませることができるか、次回をお楽しみに。

つづく

BGM 交響曲40番 (モーツアルト)

ふくろう

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