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お話と音楽

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カノジョの旅立ち  の巻き

前回はエミーの家にチャピーが彼を連れてきて、皆に紹介したお話を書きましたが、覚えていますか?
次の日、チャピーと彼は皆に別れを告げて、旅立って行きました。

エミーとマスターは食べ盛りの2匹の仔猫たちの食料を確保するために、大忙しです。朝早くから森の中へ木の実や虫など、仔猫たちが好きそうな獲物を採りに出かけます。仔猫たちも一緒に連れていって、バッタやトカゲを捕まえるトレーニングや、食べられる野草と食べられない野草の見分け方など、教え始めました。一人前の猫になるよう、教育しなくてはならないのです。

季節はもう夏になっていました。カノジョも一人で旅に出る決意をしたようです。

カノジョ「エミー、マスター、色々とお世話になりました。お別れするのは淋しいけど、私も旅に出てみます。」
マスター「いつかこの日が来ると思ってイタゼ。カノジョはまだ若いのだから、これからどんな素晴らしい出会いが待ち受けているかもしれない。体には気をつけてな。」
エミー「ずーっと一緒に暮らせると思っていたのに、淋しくなるわ。でもカノジョの好きなように生きたほうがいいわね。時々帰ってきて、旅のお話を聞かせてね。」

今回はカノジョもチャピーたちも、魔法のじゅうたんは使わないで、徒歩で旅に出ました。
自分の足で一歩づつ歩いていこうという意思の現われです。
カノジョは太陽のギラギラ照りつける道を長く歩くのはやめて、深い森の中へ入って行きました。

はじめの2,3日はエミーが持たせてくれたお弁当を食べて過ごしましたが、やがて水も食料も底を尽き、バッタやトンボ、カマキリ、蝶や蛾の幼虫、ムクドリの卵まで捕って食べるようになっていました。
はじめは可哀想という思いで、なかなか手が出せなかったのですが、空腹を満たすためには、そんなことを言っていられません。
動く物を見ると、自然と体が反応するようになってきました。獲物らしき物を見つけると、すごいスピードで捕まえることができるようになってきたのです。
今まで眠っていた野生の本能が目覚めたのです。

一人ぼっちの旅は、淋しくはありましたが、気楽で開放感に満ちたものでした。森の中には、小さな川も流れていて、水はぶるっと身震いするほど冷たかったのですが、川に飛び込んで泳いだり、体を洗ったり、魚も捕まえられるようになりました。
家を出るときに着ていた服は、ぼろぼろになり、もう衣服を身につけていませんでしたが、不思議と恥ずかしい気持ちはありませんでした。
周りの生き物たちすべてが、衣服など着ていませんでしたから。

カノジョが川原で採ってきた魚を食べていると、物陰からこちらを見つめている1匹の子ウサギに気がつきました。
カノジョが子ウサギを見ると、子ウサギは一瞬怯えた表情で、身構えました。
カナジョはニコッと笑って、
「こっちへいらっしゃい。いっしょにお魚を食べましょう。」と言い、魚を子ウサギに差し出しました。

つづく

BGM 歌に生き、恋に生き(歌劇トスカより)プッチーニ

イラストの説明
カノジョが捕った魚を食べようとしたそのとき、木陰からコウサギが!
カノジョが捕った魚を食べようとしたそのとき、木陰からコウサギが!

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