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お話と音楽

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エミーの家は雪だらけ  の巻き

コロボックルの村を出た5匹は、魔法のじゅうたんに乗って、エミーの家に戻ることにしました。山を越え、海を越えて、エミーの家が近づくにつれて、眼下の景色は白一色になってきました。山も畑も街も雪で覆われています。
チャピー「すごい、銀世界になってる!!」
マスター「こんな雪景色、見たことないぜ!!」
エミー「私の家、だいじょうぶかしら。雪に埋もれてしまっているかもしれない。」

やがてじゅうたんは、エミーの家の玄関前にふわりと降り立ちました。しかし、2m近い雪が降り積もっていて、その雪の中に降り立ったので、雪の落とし穴に落ちたようなものです。5匹は体中すっぽり雪を被ってしまいました。

グレ「すげえなあ、なんだよ、この雪は!!」
カノジョ「ああ苦しかった。一瞬息が出来なくなってしまったわ。」
雪を払いながら5匹が玄関を開けようとすると、玄関の前に木箱が置いてありました。木箱には手紙がついていました。
『ノラーズの諸君、お帰りなさい。この大雪の中を大変だったね。君達はたぶん冬支度の準備をしていかなかったと思うので、この「ホノオクン」をプレゼントします。暖炉や台所のコンロの火など、火をつけてくれるすぐれ者です。
メイ・クロスケより』

エミー「助かったわ。この雪では、薪を集めに行くこともできないし、去年はずーっと旅に出ていたから、薪の保存もしてなかったのよ。」
チャピー「どんなものが出てくるのかしら。さっそく開けてみましょう。」
グレが箱を開けると真っ赤な炎の形をした人形が入っていました。人形は5匹を見ると、
「はじめまして、僕ホノオです。ホノオクンと呼んでください。」と言って箱の中から出てきたのです。そして
「それではさっそく火をつけましょう。」と言って、先頭に立って、家の中に入っていきました。

カノジョ「驚いたわ、人形だと思ったら、しゃべれるのね。それにどんどん歩いていったわ!!」
5匹はあっけにとられながらも、ホノオクンのあとに続いて行きました。ホノオクンはまるで以前からこの家に住んでいたかのように、迷うことなく居間の暖炉に近づいていきます。
暖炉の前に来ると
「それではみなさん、今から暖炉に火をつけます。」と言って、暖炉に向かって
「炎を燃やせ!!」と叫びました。
するとどうでしょう。薪もくべていない暖炉に、赤々と火が灯ったのです。

次にホノオクンは台所に行って、コンロの前で、また
「炎を燃やせ!!」と叫びました。コンロにも火が灯り、エミーはあっけにとられながらも、大なべに水をたっぷり入れて、コンロに乗せました。

エミー「ホノオクン、ありがとう。これでみんなに温かいスープを食べさせられるわ。」

カノジョ「メイとクロスケはなんてすばらしいプレゼントをくれたのでしょう。」
チャピー「本当、驚き!!天国もコロボックルの魔法みたい。早く天国に行きたくなってしまったわ。」
カノジョはチャピーが冗談で言ったとは、わかっていましたが、若くして天国に召されていったメイのことを思い出し、
「そんなことはだめよ。それぞれが与えられた寿命というものがあって、いつ天国に召されるかは、神様しかご存知ないのです。こうしてメイとクロスケが色々届けてくれるから、感謝して暮らしていきましょう。」
と言いました。
チャピーもいつにないエミーの真剣な表情に、心がチクリとしました。

その夜は、たいしたご馳走もありませんでしたが、5匹は赤々と燃える暖炉の前で、エミーが作ってくれた豆のスープを飲んで、とても幸せな気持ちになっていました。ホノオクンは液体を飲むと、火を起こす能力が無くなってしまうそうで、乾煎りした大豆だけ食べました。

マスター「明日は早起きして、池に魚を獲りに行こうぜ。」
チャピー「きっと池には氷が張っているわ。」
マスター「氷に穴を開けて、釣り糸を垂らせばいいさ。何が釣れるか楽しみだなあ。」

こうしてエミーの家の夜は更けていきました。

つづ く

BGM わすれな草(リヒナー)

イラストの説明
ホノオクンノお陰で、エミーの家の暖炉には、赤々と灯が灯りました
コロボックルの少女は卒業試験に合格して、空を飛べるようになりました

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