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お話と音楽

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あのクリスマスをもう一度の巻き

一年ぶりに帰るクロスケの家は、どんな風になっているでしょう。
家の前に立ったグレたちは、以前と少しも変らないたたずまいに、「クロスケがいないなんて信じられないよ」「君たちよく来てくれたね、とか言って、今にも出てきそうよ」という心持でした。チャイムを押すと中からは、
「お帰りなさい」
とバーバラさん(うぐいす)と娘のルリーが出迎えてくれました。
ルリーはびっくりするほど娘らしくなっていて、マスターもグレも頬を赤らめました。
「ルリー、きれいになったね。君がねこだったら結婚を申し込みたいところだよ。」
とマスターが言いました。
「うぐいすとねこじゃ、結婚は無理ね。」
ルリーがそう言うと、みんな大笑い。

家の中に入ると、ダンボール箱の山です。
今年は去年の3倍くらいの木の実や干物、ワイン等が送られてきていました。
みんなクロスケが死んだことは知っていましたが、クリスマスの行事は絶やしてはいけないと思っていたのです。
あくる日からグレたちも作業に加わりました。近所のねこたちに混ざって、クロスケが生前一緒に仕事をした仲間のフクロウたちも、手伝いに来てくれていました。
カノジョとチャピーは木の実の入ったクッキー作り、グレは干物セット作り、そしてマスターは又、ワイン詰めの係りでした。
今年も去年のように、ちびちびワインを舐めながら、作業がはじまりました。

一週間ほどすると、作業も終盤に差し掛かり、いよいよクリスマスツリーを立てることになりました。
去年よりも大きなツリーが運ばれてきて、イルミネーションが灯ると、もうすっかりクリスマス気分です。
近所の子猫や年老いたノラ猫たちが待ってましたと列を作って並び始めました。去年と同じように、子猫たちには、あたたかいミルクと木の実入りのクッキー、年老いた猫たちには、ねこ型のびんに入ったワインと干物セットが配られました。
天国からは、トミー(羽の生えたトナカイ)が奥さんのミミーを連れてやってきました。
今年は2台のソリで配って回るのです。
メイとクロスケも天国からぬいぐるみのプレゼントを贈ってくれました。ぬいぐるみはメイとクロスケにそっくりにできていて、持ち主が話しかけると、返事をするのです。
子供たちだけではなく、一匹暮らしのお年寄りにも大好評でした。

そしていよいよクリスマスイブの日がやってきました。今年は去年にも増して豪華な顔ぶれで、観客のねこたちは、興奮状態です。
グレがごあいさつします。
「みなさん、お陰で今年もこうしてクリスマスイブを迎えることができました。クロスケはもうここにはいませんが、天国からプレゼントを届けてくれました。今年は新にフクロウさんたちも手伝いにきてくれました。そして今日はギャラネコから、メルリンケルも駆けつけてくれました。」
メルリンケルが帽子を取って会釈すると、ワー!!キャー!!とすごい歓声に包まれました。このクリスマスの大事な時期に、メルリンケルはショーをキャンセルして、来てしまったのです。グレたちにとってはうれしいことでしたが、メルのファンには申し訳ない気持ちでした。
去年と同じように、聖歌隊の子猫たちの賛美歌から始まりました。全身の毛をオレンジ、イエロー、ブルーに染めたロックグループも去年以上にエキサイトした演奏を聴かせてくれました。
そして今日は真っ白なタキシードに身を包んだメルリンケル、バーバラさん親子のデュエットもすばらしいものでした。
バーバラさんのあの美しいソプラノに引けをとらないほど、娘のルリーはうまくなっていたのです。

そして、グレたちはチャピーも加わって、4匹になったノラーズとして出演しました。
グレたちの演奏も去年とは比べ物にならないほど上達していました。

最後は観客の猫たちも一緒になって、「勝利をわれらに」と「クロネコブルース」の大合唱で幕を閉じました。
今回はじめて参加したフクロウは大感激。
「クロスケは毎年こんなクリスマスをおくっていたのかあ。これからも毎年参加させてください。」
メルリンケルは、
「本当になんてすばらしいクリスマスだろう。僕もクリスマスは毎年ここに来るよ。」
「みんな一度参加したら忘れられない感動なのですよ。それでどんどん参加者が増えてしまうの。もう来年はここの庭には入りきらないかもしれないわ。」
バーバラさんがやさしくほほえみました。

つづく

BGM INVENTIO 9 ( J.S.バッハ)

クリスマス

お知らせ

一人の高校生が地雷撲滅を願って、絵葉書を作り、一人で募金活動をはじめました。
彼女は現在大学1年生で、募金活動と署名活動を続けています。
私(花岡文子)は、この活動を支援しています。皆さんのご協力をお願いいたします。
詳細はEメール:glay-cat-kurosuke@nifty.comでお尋ねください。

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