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お話と音楽

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メルリンケルの巻き

ハトのポッポさんは、チャピーの親からの手紙を持って帰ってきました。
「チャピーへ
随分心配しましたが、チャピーが無事なことがわかって、安心しました。自分で選んだ道ですから、がんばって続けてください。陰ながら応援しています。いつもあなたのパパとママより」
皆さんは意外な手紙だと思ったでしょう。
娘に家出された親というものは、もっと必死で娘を連れ戻そうとするはずだ、というのが人間の世界です。
ねこの世界は、親の子離れがきちんとできていて、自立して巣立っていった子供を連れ戻そうとしたりしないのです。一人前のねこになる事を願い、淋しくても自立を認めるのです。
一度家を出たねこは、二度と親といっしょに生活しません。チャピーはまだ幼くて、頼りないものの、自立したのです。

チャピーの入った、ノラーズの演奏は、レベルアップしました。何しろチャピーは、幼少からピアノのレッスンを受けていましたので、キーボード奏者として加わりましたが、すぐに全部のレパートリーをこなしていきました。
マスターもチャピーの勧めで、ウッドベースを少し弾けるようになっていました。
ノラーズは、一ヶ月ほど同じ場所で演奏すると、次の町へ移動していきました。
どこでも大変な人気で、ノラーズの名前は、ギャラネコの地では、次第に有名になっていったのです。

そんなある日、チャピーは一枚の写真をうっとり眺めていました。それは、今ギャラネコで最も人気のある「メルリンケル」の写真でした。
「メルリンケル」はすい星のごとく現れたミュージッシャンで、甘いマスクと美しい歌声は、女の子たちに大評判。<メル様>と呼ばれ、たちまちヒットチャートNo.1に上り詰めたスターでした。
チャピーの見ている写真をのぞいたカノジョは、びっくりしました。
「メイだわ!メイにそっくり!」
メルリンケルは、あの天国のメイにうりふたつだったのです。
この瞬間から、カノジョもメルリンケルの大ファンになってしまいました。

カノジョとチャピーは、メルリンケルのコンサートにはかかさず、通いました。そして帰ってくると、「やっぱりメル様はすてき!!」と言って、うっとりしているのです。おもしろくないのはマスターとグレ。メルリンケルは彼らの最大の敵になりました。
マスター
「あんなやつのどこがかっこいいんだ。チャピーはまだガキだから、仕方ないとしても、いいかげん目をさませ、カノジョ!」
グレ
「あいつは君の愛していたメイじゃないんだ。なんでそんなに夢中になるのか、僕にはわからないよ。」
カノジョ
「ご忠告ありがとう。でもあなたたちも、年甲斐もなくやきもちをやいていないで、一度コンサートに行ってみれば。そうすれば、メル様のすばらしさがわかるわよ。」
カノジョにここまで言われたマスターとグレは次のコンサートに、いっしょに行くことにしました。

憎き敵の陣地に突入というわけです。この続きは次回をお楽しみに。

つづく

BGM 空気の精(J.F.Burgmuller)

カノジョとチャピー

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