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お話と音楽

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感謝の気持ちの巻き

3びき(グレ、カノジョ、マスターの3匹ののらねこたち)が、ブランデーパークをあとにしようとしているところへ、あの時のりすのコーラスグループが、やってきました。
「元気になられてよかったですね。よかったら、僕たちのアパートに来ませんか。」
3びきは、驚いて聞き返しました。
「え、アパートで暮らしているんですか?」
リーダーのバリというラテン系の顔をしたりすが言いました。
「アパートといっても、家賃はただなんです。廃屋になっていた建物に、僕たちのように、住むところのない住人が、暮らすようになって、今では、20室あった部屋も、ほとんどふさがっています。幸い2階の角部屋が空いたところなので、よかったらどうぞ。」
「信じられない幸運てあるんだなあ。2回も助けていただいて、何とお礼を言ったらいいか。よろしくお願いします。」
グレは思いがけない話に戸惑いながら、お礼を言いました。

3びきは、夢のような気分のまま、りすたちの案内で、廃屋のアパートへ着きました。
廃屋といっても、外観はかなり荒れ果てていましたが、中はきちんと片付けられ、それぞれの住人が工夫をこらして、個性的な部屋になっていました。
案内された部屋は10畳ほどの広さで、キッチンとバス、トイレが付いている他は、だだ広い空間で、ベットもありませんでしたが、3びきにとってはりっぱなお城でした。
「僕たち、生まれてはじめて、自分たちの家が持てたなあ。」
グレ
「家じゃなくて部屋だよ。」
マスター
「どっちでもいいじゃないか。ここにいる限り、敵に襲われることはないんだ。」
3びきはうれしくて、ガランとした部屋の床をころげまわりました。
「ベットやテーブルは働いて、少しづつそろえればいいわ。明日からがんばりましょう。」

アパート気分を満喫しているところへ、隣の住人だという、野うさぎのバレン君がやってきました。
「はじめまして、僕バレンといいます。今は絵描きの卵ですが、将来一流の画家になるつもりです。何かわからないことがあったら、なんでも聞いてください。」
「僕はグレ、それから、マスターとカノジョです。僕たちも一流のシンガーになるつもりで、ストリートミュージシャンをやろうとしていたのですが、楽器も衣装も取られてしまったのです。まずは仕事を探さなくてはならないのですが、何かありませんか?」
「僕がアルバイトしているレストランでよかったら、聞いてあげますよ。明日いっしょに行ってみませんか。」
「本当! みんななんて親切なんだろう。ありがとう、お願いします。」

翌日、3びきはバレンにつれられて、ロリータというレストランに行きました。店長が出てきて、
「事情はわかった。はやく楽器が買えるようにがんばってください。グレとマスターはサラ洗い、カノジョはウエイトレスの仕事をしてもらいます。」
といってくれました。
3びきは、幸運にも、家と仕事にありつくことができたのです。

レストランの仕事は、グレたちにとっては最高の仕事でした。グレとマスターはサラ洗いの仕事でしたので、お客の残した料理をつまみながら、サラを洗いました。はじめはとても飢えていたので、サラについているソースまできれいになめてしまい、サラがぴかぴかになり、洗ったサラと見分けがつかないので、それだけはやめてほしいと忠告されました。とてもおいしい料理なのに、結構残り物が出て、夜と次の朝の食事の分まで持ち帰ることができました。それでもたくさん余った分は、ホームレスのねこたちに配りました。レストランでは、料理したあとの、野菜くずや魚の骨など、残飯がたくさん出ましたが、3びきは、ねずみ委員長たちに仕込まれた腕を生かして、どんな残飯もおいしい食材に変えてしまいました。レストランの従業員もおいしいと食べてくれましたし、ホームレスのねこたちも大喜びです。それに何より生ゴミがほとんど出なくなりましたので、店長もほめてくれました。
こうして、働いた給料は、家賃も食費も要りませんでしたので、すべて、楽器と衣装を買うことに回せました。今度こそ、ストリートミュージシャンになることができそうです。

グレ
「猫生っておもしろいなあ。7ころび8おきというのは本当だなあ。」
マスター
「本当にもうこの世も終わりかと思ったら、次にはこんな幸せがやってくる。」
カノジョはアパートの窓から見える夕日に向かって、天国のメイに報告しました。後ろから、
「本当によかったね。」
というメイの声が聞こえたような気がして、振り向くと、メイはいませんでした。

つづく

BGM 即興曲(遺作) F.Schubert

レストランのグレ

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