4匹を乗せたクロスケのじゅうたんは、トカゲケイコクに向けて出発しました。いくつもの山々を眼下に見下ろしながら、ケイコクの奥へ奥へと飛んでいくと、急に眼下が開けて、突然街のような風景が現れたのです。
カノジョ「街があるわ!!」
マスター「こんなケイコクに!誰も見たことのない街だぞ!!」
4匹はびっくりしました。かってトカゲケイコクを目指して、2度と帰らなかったネコたちは、きっとこの街までたどり着くことができなかったのでしょう。街の周りは断崖絶壁になっていて、中を見ることはできないのです。
じゅうたんが段々近づくに連れて、街の門のところに『ようこそ、トカゲケイコクへ』という横断幕を持ったトカゲとヤモリが立っている姿が見えてきました。
「あのトカゲとヤモリは人形かな?かなりでかいぞ。」マスターが言いました。
じゅうたんは段々降下を始めました。すると、同じくらいの大きさのトカゲとヤモリが何匹も集まって、グレたちに手を振っている様子が見えてきました。
地上まであと100Mくらいまで下降したところで、グレたちは驚愕しました。
グレたちはコタロウからきた手紙を読んだ時には、コタロウはグレたちが子供のころいっしょに遊んだ小さなトカゲだと思っていたのです。それが目の前で手を振っているトカゲは、グレたちの5倍くらいの大きさがあることがわかってきたのです。
マスター「動いているぞ、人形ではない、本物だぞ!!」
チャピー「あんな大きなトカゲたちの中に入ったら、食べられちゃうかもしれないわ!!」
グレ「クロスケ何とかしてくれ!そうだ、じゅうたんよ!すぐに引き返せ!」
みんな必死で念じましたが、じゅうたんはどんどん降下していきます。
「何で言うことを聞かないんだ!」
「どうしたんだ!」
その中でカノジョだけは平然としていました。
そうです、カノジョはせっかくのコタロウの頼みだから、そんなことにはめげず、トカゲケイコクに行こうと念じていたのです。トカゲたちがどんなに大きくても、コタロウが手紙をくれたのです。グレたちを食べてしまうとは思えません。クロスケのじゅうたんは、生前からクロスケがカノジョのことを好きでしたので、カノジョのことを思いながらじゅうたんを製作しているうちに、カノジョの言うことは特に良く聞くじゅうたんに仕上がってしまったのです。
待ち構えていたトカゲとヤモリたちの前に降り立ったグレたちは、恐怖で顔が引きつっていました。しかしカノジョはニコニコして代表で挨拶しました。
「こんにちは、お招きくださってありがとうございます。こんな高いところにすばらしい街を作られたのですね。美しい街だわ!」
カノジョたちと同じくらいの大きさの子供トカゲが前に出て、挨拶しました。
「僕がコタロウです。僕たちの街へようこそおいでくださいました。」
つづいて、街の長老がカノジョの手を取って、言いました。
「ノラーズのみなさん、よくおいでくださいました。皆でお待ちしていました。さあ、ご案内いたします。」
グレたちはまだ躊躇していましたので、カノジョが先頭になって、コタロウと長老のあとに続いて歩き出しました。
マスター「おい、お前こわくないのか?何で平然としているんだよ、おれたちはもう助からないかもしれないんだぜ。」
チャピー「私こんな大きなトカゲたちの前で、演奏なんてできないわ。」
グレ「もう引き返すこともできないよ。どうしたらいいんだろう。」
みんなぶつぶつ、つぶやいています。カノジョはそんな話を無視して、コタロウと楽しそうに会話しています。
カノジョ「コタロウ君たちの街はすばらしいわね。よくこんな高いところに造れたわね。」
コタロウ「僕のおじいさんのもっと前からあった街らしいんだ。トカゲとヤモリが仲良く暮らしてきたんだ。それからコンドルという大きな鳥がいて、僕たちを守ってくれているんだよ。僕たちは困ったことがあると、コンドルのところへ行って相談するんだ。そうするとたちどころに問題は解決して、今までに争いごとが起きたことがないんだよ。」
カノジョ「平和な街なのね、そのコンドルという大きな鳥は神様みたいな存在なのでしょうね。」
コタロウ「今から行くところはそのコンドルの住んでいる崖の上だよ。コンドルもノラーズにとても会いたがっていたから」
カノジョ「まあ、うれしいわ!!」
カノジョとコタロウの後ろからついてきた3匹は、美しい街並みとカノジョたちの会話を耳にして、しだいに恐怖心が薄らいできました。
険しい崖の上にコンドルの宮殿はありました。100段ほどある石段を上り詰めると、白亜の宮殿が現れました。長老が先頭に立ち、コタロウ、カノジョ、そして他の3匹も大理石の大広間に入っていきました。
大理石の中央には、大きくて不思議な鳥が、威厳に満ちたまなざしでグレたちを見ていました。
「コンドル様、ノラーズの方々をお連れしました。」長老が挨拶しました。
コンドル「遠いところを良く来てくれました。私もノラーズのファンなのです。しかし、人里離れたへき地では、来てもらえないだろうとあきらめていたのです。どうもありがとうございました。」
カノジョ「私たちこそ、お招きいただきまして、光栄です。こんな高いところに立派な街があるなんて、感激しました。こんなすばらしいところで、コンサートができるなんて、幸せです。」
長老が言いました。
「今日はお疲れになったでしょう。私の家でゆっくりお休みください。」
その日は、長老の家に泊めてもらうことになりました。
白い石造りの家で、南向きの大きな窓から、遠くの山々や、森の木々が見える、居心地のいい部屋に通された4匹は、食事を取る気力もないほど疲れていて、すぐに眠り込んでしまったのです。
とにかくトカゲケイコクにやってきた4匹です。
明日は、ノラーズらしいコンサートをやってくれるでしょう。